視界良好、障害物なし。

私が思う幸せは、あなたが思う幸せじゃなかったの。

貫井徳郎『崩れる』

久々に小説を読んだ。読み始めたのは今年の2月頃だったと思うから、いかに時間を取っていなかったかを実感する。『崩れる』は短編集で、サブタイトルにある通り「結婚」に関連した作品ばかり。ただ一口に結婚と言っても子のいる夫婦、子のいない夫婦、婚約済みのカップル、結婚相談所に勤める女性など主人公はさまざまで、内容も不倫から隣人の異臭までと幅広い。

崩れる
インタビュー形式と当時の描写で話が進む。まだ短編の書き方が分かっていなかったらしいけど、表題作だけあって抜群の完成度。家事はまったく出来ずほぼニートみたいなイラストレーターの夫と、2ヶ月で銀行勤めを辞めたニートの息子を抱えるパート勤めの女性が主人公。結婚したいなんて微塵も思ってないけど、この夫と息子の体たらくさは少し想像しただけでうんざりして結婚への希望的観測を破壊してくれる。笑 銀行マンだった息子が無職宣言をしてきたその口で「おれ、アニメーターになるよ」と言ってくるのも最悪度が高い。しかも専門学校に行くけど学費は出してくれと。地獄〜! この後、ポルノ小説への挿絵がメインである夫(ほぼニート)とアニメーター志望の息子(ニート)が口喧嘩を始める。どっちも同じ穴の狢〜〜〜〜。笑 主人公の生活への嫌気たるや想像するまでもない……。
何とない主人公の描写に鬱憤であるとかストレスであるとかがさり気なく感じられる。私が他に読んだことのある貫井徳郎の小説は『乱反射』だけなんですが、この崩れるの物語運びはそれと似ている感じがした。ある部分から明確な目的を持って早足で進んでいくのを感じるこの運び。

短編1つに軽く感想をメモするつもりだったけど、思いの外長くて、あとお腹も空いてて、疲れた。終わり。